異世界転生モノと記憶喪失

 異世界転生モノばかりだ、という話がよく出てくる。

異世界転生モノのフォーマットを考えてみると、記憶喪失モノとの関係を考えてしまう。

 

 物語を展開するに当たって、主人公が読者とは異なる知識を有しているのは望ましくない。

主人公と読者が同時に知っていくのが望ましいというのがある。

これを解決するのに、昔は記憶が失われるという設定が流行ったということなのだろう。

設定を主人公と読者が同時に知っていけるわけである。

 

 次にいわゆるチート能力である。

記憶を失っているだけで、元何らかのエキスパートである設定が持ち込めるので、チート能力に無理がないというわけである。

昔、海兵隊にいたので戦闘能力が高いとか、シェフだったので料理が上手いとか。

なんらかの才能で……というよりは、経験なので無理がないというわけである。

 

 こうしてみると、異世界転生モノは記憶こそ失われないものの、世界そのものが別世界になってしまう為、主人公と読者はその世界を同時に知っていくフォーマットになるし、逆に前の世界の記憶が残ってるのでチート能力を持つ(場合によっては転生時に付与されてるが)ということもできる。

いわば記憶喪失のフォーマットが昔流行ったのが、単に異世界転生という形に変わっただけなのではないかと思うのである。